杉浦非水というグラフィックデザイナーをご存知でしょうか?
先日たばこと塩の博物館にて開催されている、「杉浦非水 時代をひらくデザイン」へ行ってきました。

写真撮影はできなかったので文字だけになりますが、簡単にレポートしたいと思います。

杉浦非水とは?

日本で最初のグラフィックデザイナーと呼ばれている人物です。
明治期に三越呉服店でポスターやPR誌などを手がけていました。
わたしは名前は初めて聞いたのですが、彼の描いた絵にはいくつか見覚えがあったので、おなじような方がいらっしゃるかもしれません。

モダンなデザインのポスターや、そこに描かれた女性の姿と植物などの絵柄が華やかでかわいらしさがあり、どことなくミュシャを思い出させるようでした。
展示を見ていくなかで、非水は西洋のアール・ヌーヴォーに影響を受けていたともありましたので、彼の成してきた仕事を見ると日本のミュシャのようでもあったのかなと思いました。

作品を見て

非水は明治〜大正〜昭和と3つの時代を生きた人物で、彼のデザインを通して時代の移り変わりも感じることができました。
それが特に現れているな、と思ったのが地下鉄で上野浅草間が開通したときのポスターでした。

このポスターは展覧会のメインビジュアルにも使われているものです。

「東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」の文字が、現代と同じ左から右へ書かれていました。
これ以前の作品では、文字は現代とは反対の右から左にしか書かれていませんでした。

調べてみると、右から左に進んでいたのは巻物に文字を書いていたことに由来しているようです。
そこから現代と同じ左から右になったのは、日本人が西洋の文化に触れたことがきっかけだそう。
こちらでも見ることができますが、文字は右から左のものになっています。

作品内で文字が左から右に書かれ始めたのは、ちょうど地下鉄ポスターが制作された1920年代から。
第一次世界大戦で欧米諸国との貿易が盛んになった頃で、西洋の文化がより日本に影響を与え始めたのが理由かもしれません。

ひとりの人間の作品で、時代背景まで考えさせられるのはとてもすごいなと思いました。

今回展示されていた非水の作品で、わたしが一番すごいと感じたのがこちらの作品です。
非水の三越関連の作品にはタイポグラフィがありますが、特にこの作品はまるで看板をデッサンしたかのような角度で表現されていて、これをデジタル機器もない時代に描いていたのかと思うと感嘆するしかありません。

今回の展覧会を経て

非水の三越における仕事は、現代におけるブランディングの成功例とも言われています。
また、デザインについて「芸術性を保持しながらも、クライアントの要求を汲んでないように沿った図案をするべき」とも説いています。
デザインとは課題解決であると言われています。そのことを、まだ「グラフィックデザイナー」という肩書きがない時代から意識していました。

デザインについてはまだまだ勉強中の身なので、今回の杉浦非水展はグラフィックデザインについての考え方などを再度意識させてくれるとても印象深い出来事になりました。
ひとりよがりのデザインにならないよう、なんのためにデザインするのかを忘れずにいきたいです。